叶わない、それでも……

「今から隠れんぼしようぜ〜!」

子どもの一人がそう言い、ジャンケンをして鬼が決まる。子どもたちは鬼が数を数えている間にバラバラに隠れ始めた。僕はクララの後を追う。

「ここなら見つからないよね」

クララがそう言って隠れたのは、庭にある噴水の陰だった。その横顔はとても楽しそうだ。

その時、「きゃあぁぁぁぁぁ!!」と甲高い悲鳴が響く。僕はうるさいなと思っただけだったが、クララは相当驚いたようで肩を大きく震わせていた。

「何だろう……」

クララは噴水の陰から出て声のした方へ向かう。クララだけでなく、他の子どもたちも声のした木の辺りに集まった。

木の近くで赤いドレスを着た女の子が震えている。その目からは、大粒の涙をこぼしていた。

「この子、巣から落ちちゃったみたいなの」

女の子が指さす先には、この木の上にあった巣から落ちた鳥の雛がいた。全身を痙攣させ、その小さな体からは血を流している。放っておけばあと二、三分で死ぬだろう。

小さな雛の様子を、みんな体を固まらせて見つめていた。見つめていれば助かるってことはないのにね。

その時、悲鳴が聞こえたのか「あなたたちどうしたの?」と紫のエレガントなドレスを着た大人の女性が現れる。クララの母親だ。

「お母様、小鳥が怪我をしているの」

クララは母親にそう言い、地面に倒れている雛を指さす。途端に母親は顔をしかめた。