「こんなところでこそこそしている理由はわからぬが、達者でやれよ。じゃあな、人間の娘」

「お、お待ちになって!」

 ……なって?? 聞きなれない言い回しに、思わずアリギュラは足を止めてしまう。顔をしかめて振り返ったアリギュラに、娘はぱんぱんとスカートについた草キレを払い立ち上がった。

「先ほどお叫びになったの、あなたなのでしょう? あなたも随分と、鬱憤を抱えておいでなのではないかしら?」

「まあな……」

 話が見えてこないまま、とりあえずアリギュラは頷く。すると娘は、ドリル型の髪を揺らしてにこりと微笑んだ。

「これも何かの縁! 同じ時間に、同じ場所で鬱憤を吐き出した仲ですわ! せっかくですもの。お互いに、もう少し一緒に、鬱憤を吐き出してはみませんこと?」