けれども、光の剣を手にまっすぐに魔獣を見据える麗しい聖女。そんな神話の一場面のような光景に、ジークはただただ純粋に、畏敬と興奮の念に突き動かされていた。

「どうか、私、ジーク・エルノア・ローエンベルンを、貴女の剣に選んでください!」

 けれども聖女は、なぜか不満そうに光の剣を見た。

「……異界の魔剣はこんなものか」

 見上げる人々には届かなかったが、聖女はそんな風に小さくぼやく。そして、あろうことが、光の剣をぽいと海に放り投げた。

「う、うわぁぁぁぁ!?!?」

「聖剣がーーーーー!?!?」

 ジークらは思わず悲鳴を上げた。

 人々の希望を乗せた光の剣が、ぽちゃんと海に落ちる。唖然と口を開いたまま、ジークたちはなすすべもなく塀からそれを見下ろす。