そこでメリフェトスは、苦し紛れに小さな嘘をついた。

〝じ、実は、魔王の魔法が頭に当たったせいで、ところどころ記憶が曖昧でして……〟

 言いながらメリフェトスは目が泳いでいたし、アリギュラに至っては半目になって呆れていた。けれども、そんな苦しい言い訳を、信じがたいことに彼らは鵜呑みにした。

 そうして時々「死にネタ」でいじりつつも、念のためということで、アリギュラと一緒にメリフェトスも講義を受けるように勧めたのである。

「だぁー! つっかれたー!」

 無事に今日のノルマを終え、いちごのケーキにもありつけた後。海に面した高台でアリギュラは思いっきり欄干にもたれた。

 甘いものを摂取したとはいえ、朝からずっと講義づくめでアリギュラはくたくた。軽く知恵熱を出してしまいそうな疲労感である。

 ちょうど時刻は夕方。傾き始めた太陽が、大海を微かにオレンジに染め始めている。そんな優美な光景をぼんやりと眺めていると、隣でふと、メリフェトスが呟いた。

「私、未だによく分かっていないのですが……」

「うん?」