「っ、メリフェトス!!」

 我に返ったアリギュラは、弾かれたように立ち上がる。おそらく無意識だろう。声に応えて、影の隙間でメリフェトスの手がぴくりと動く。それに飛び付こうとして、アリギュラは地を蹴った。

「手を伸ばせ!! はやく、わらわに」

掴まれ。その声は、届かなかった。

 蕾がしぼむように、影が地面に沈む。ドプリと音がして、メリフェトスもろとも、影は跡形もなく消失してしまう。

後に残されたのは、コロンと転がる黒い水晶。そして、こちらの世界に来てからメリフェトスがいつもつけていた、ヒビの入ったモノクルだけだ。

「どこだ、どこにいった」

 ひとり呆然と、彼の消えた場所をアリギュラは見つめる。異変に気づいた何人かが、野原を駆けてこちらに戻ってくる。けれども他の攻略対象たちを気にしてやる余裕もなく、アリギュラはもう一度叫んだ。

「返事をしろ、メリフェトス!! どこにいる――!」