「おぬしはおぬしで、今日もブレないな。そんなにジークがやられるのが好きか」

「ええ、聖女様。おかげさまでアリギュラ様がいらしてから、私は愉快な毎日を過ごさせてもらっていますよ」

 滲んだ涙を指先で拭う弟に、ジーク王子もやれやれとため息を吐く。

 ちなみにルーカスは、兄と同じく『まほキス』の攻略対象者だ。

 物語の中でルーカスは、完璧な兄といつも比べられてきた。そのため彼は、ジークに対し複雑な想いを抱いているらしい。

 ルーカスのルートでは、そんな彼の痛みにヒロインが寄り添い……というストーリーのようだが、この分だととうに悩みは解決していそうだ。

 さて、キャロラインにジーク、ルーカスに連れられて、アリギュラは緩やかな丘を登っていく。すると見晴らしよく開けた場所で、手を振る人影が見えた。

「おぉーい! こっちだー」

「ちょっと、殿下? 僕はアランと違って、肉体作業は得意じゃないんだけど?」

「……どうも。おじゃま、してます」