「もう遅いから…」 少し落ち着かない鼓動をそのままに言うと、詩くんは手を止め、形のいい眉毛を八の字に下げた。 「………いかないで」 ちょっと掠れた悲しげな声。 その表情はまるで飼い主と離れる犬のよう。 大きな体は全身で わたしがベッドから出るのを拒んだ。 「詩くん…痛い」 「………」 「詩くんてば…」 「………」 声をかけても、わたしをただひたすら抱きしめる詩くん。 さすがに根負けして わたしは動くのをあきらめた。