ギリギリ帰れるかな… お母さんにバレないように 忍び足で家に入らないとね。 なんて、頭の中でイメージしながら、無事に自分の部屋に戻れるような算段を組み立てる。 そしてわたしの体に回る詩くんの腕からゆっくりと出ていこうとした時だった。 「──雪(ゆき)」 微睡んだ低い声が聞こえて ぎゅううう…っと大きな体に抱き込まれた。 わたしの吸う空気が、全部、詩くんの匂いになる。