唇から伝わる千柳様の熱。
私の脳が、ハチミツみたいに
とろけていくのがわかる。
幸せすぎて。
現実なのか夢なのか
自分でもわからなくなるほど。
ゆっくりと離れていく、千柳様の唇。
気づいたら
私の瞳から涙が零れていた。
私、なんで泣いているんだろう。
「雪那、ごっ……ごめん」
悪魔が剥がれたように、
普段通りの優しい千柳様に戻っている。
「俺、久々に雪那を見たから。
なんかよくわかんなくなっちゃって」
私、何が悲しいんだろう?
大粒の涙が溢れ出し。
視界がにじみ。
千柳様がどんな表情をしているかなんて
わからない。



