「雪那は子供の頃から、俺に優しいよね」
「千柳様が私に優しくしてくださるので……
お返しをしているだけで……
でもまだ、お返ししきれていませんが……」
「じゃあ今、そのお返しを俺にしてよ」
「え?」
言葉の意味がわからなくて、
戸惑うことしかできない私。
冷たい手のひらで、私の頬が包まれ。
ドクンと心臓が高鳴ったと同時。
熱を帯びた優しい瞳に見つめられた。
「千柳……様……?」
「雪那のここ……
まだ誰にも触らせてない?」
千柳様の親指が、
私の唇を、ゆっくりとなぞっていく。
ドキドキで早まる心拍と同じリズムで、
私は何度も頷いた。
「じゃあ俺がもらってもいいよね?」
「え?」
「雪那は前に言ったよね。
俺になんでもくれるって」
「あれは……」
慌てたように言い返そうとしたのに
言葉が続かなかった。
だって……
甘い温もりが、私の唇を塞いでいるから。



