「千柳様に……
お伝えしたいことがあるのですが……」
「何?」
「千柳様が……
お屋敷にいらっしゃらないのは……
すごく寂しいです……」
ブチッ。
俺の頭の中で、
欲望を抑え込んでいた太い糸が
切れた音がした。
この音がした時、
俺はいつも、冷静でいられなくなる。
自分がどんな行動をとるかわからない。
雪那に、何をしてしまうかもわからない。
でも……もう……
自分では、制御できない……
俺は勢いよく立ち上がり
理事長室のカーテンを閉めた。
「千柳様……?」
怖がるような雪那が聞こえたけれど。
無視するように
雪那の横を通り過ぎ。
――誰にも邪魔されたくない。
その思いに支配され。
薄暗い理事長室のドアのカギを
ガチャリと閉めた。



