部屋に取り残された、雪那と俺。 ドアの前に立つ雪那と 理事長机の前に座ったままの俺との距離は 約10メートル。 お互いうつむいて。 お互い無言のまま。 二人の距離は、1ミリも縮まらない。 気まずい空気に耐え兼ね 俺は良いご主人様を演じる覚悟を決めた。 とりあえず、笑顔笑顔。 口角あげて。 声も優し気に。 余裕を醸し出して…… 「雪那に心配かけちゃったね」 「千柳様は…… 大丈夫なのですか……?」 「もう、すっかりね。 雪那の顔を見たら、胸のざわつきも 完全におさまっちゃった」