ドアを開ける勇気なんか
湧き出てこなくて
椅子にお尻がくっついたままの俺。
情けない俺を慰めるように
天音は俺の耳元で
エンジェルボイスを響かせた。
「不良先輩よりも千柳さんの方が
せっちゃんにお似合いだと思うけどな」
え?
「もちろん、僕よりもね」
「後悔で破滅する千柳さんなんて
僕、見たくないからね」
と付け加え、天音はドアに走った。
そして俺に確認なんてとらず、
ゆっくりと理事長室のドアを開けた。
「せっちゃん、急に呼び出してごめんね」
「……ううん」
「誰かに見られるとまずいから。早く入って」
天音は強引に雪那の腕をひっぱると、
理事長室のドアを閉めた。



