「千柳様……顔……近いです……」

 
 勇気をかき集めて、言葉にしたのに。




「雪那は、『おはよう』も言えないお姫様なの?」


 蜜甘スマイルで見つめられ。



「可愛すぎなんだから」



 私の耳に触れそうなほどの近さで
 千柳様に甘く囁かれ。
 

 血液が沸騰しそうなほど
 体が熱くなっていく。





「雪那、おはようは?」


「おっ……
 おはよう……ございます……」



 だから、顔近すぎですから。

 顔を逸らすのが、
 精いっぱいなんですから。




「どうしたの?そんなに動揺して」



 わからないのですか??


 ご主人様の放つ極甘に

 寝起きの体が
 過剰反応しちゃうんです!




 そんな、正直なことは言えなくて。



「こんなに朝早く、
 起きていらっしゃるなんて思わなくて……」



 動揺した
 もう一つの理由だけを口に出し

 千柳様と壁の間から
 するりと抜け出した私。





 あ~。危なかった~。


 これ以上
 千柳様の色気に襲われたら……


 抑え込んでいる自分の想いを、
 千柳様に
 こぼしてしまいそうだったよ。