「せっちゃん、ごめんね。
僕、責めるとかそういうんじゃなくて……」
「わかってるよ。
世話焼きさんなんだよね、天音君は」
「それも、違う気がするけど」
「私、ずっと甘えっぱなしだったから。
そろそろ千柳様離れしないと、だよね?」
天音くんの口元が、優しくほころんだ。
それを見て、
ホッと心が温まったちょうどその時。
「話し、まだ終わんねぇの?」
後ろから
突き刺さるようなトゲトゲ声が。
ズカズカと引きずるような足音も
近づいてくる。
「俺を待たせるとか、
ありえねぇんだけど」
耳が
『あの人、あの人』と訴えていても
脳はまだ、誰の声か識別できてなくて。
恐る恐る、振り返って。
紫シルバーの髪が瞳に写って。
鋭い眼光に、瞳の奥まで貫かれ……
「万里……先輩……?」
ようやく、脳が認識した。
なんで万里先輩がここにいるんですか?
2年生専用の昇降口なのに。



