ここなら、誰も来ないか。



 一人になりたくて逃げ込んだのは
 図書室。


 誰もいないとわかるほど無音な空間に
 ほっと胸をなでおろす。




 高い本棚をすり抜け。

 窓際に並ぶ机に
 荷物を置こうと思ったのに……



「オマエ、さぼり?」



 呆れたような低い声が飛んできて

 私の心臓をビクンと跳ね上げた。




 人が……いたんだ……
 

 机の前に座り

 本から視線を外した男子が
 私を睨んでいる。




 髪は……
 紫色に、シルバーを混ぜたような色。



 この人……不良かな?




 明らかに私を『敵』と認識している
 彼の瞳は、冷酷で。

 眉は、
 これでもかってほど吊り上がっている。




 図書室から
 逃げ出した方が良いかも。




 危険信号のように
 背筋がゾクゾクと震えだし。

 後ずさりをしようとしたのに。




「オマエ、しゃべれねぇわけ?」


 イライラ声が、私の足を固めた。