蜜甘同居 こじらせ中 ゾルック 二人目


「俺に尽くす人生から、雪那を解放してあげる」


 …………えっ?


「雪那は今日から、
 自分のやりたいことに時間を使えばいいよ」


 いきなり……なんですか?


「俺の世話係は、もうしなくていいからね」


 それって……
 私は『用済み』ってことですか?





 ゆっくりとほどかれた千柳様の腕。


 体中を包んでいた幸福感が、
 一瞬で冷凍され。

 心の奥の奥まで、
 凍りついていくのがわかる。



 反抗しなきゃ。
 千柳様の気が、変わってくれるように。




「私、やりたいことなんてありません」


「そんな寂しいこと言わないの。
 雪那の人生でしょ?」


「私の人生は、全て千柳様のもので……」


 私の時間も、命も。
 千柳様のためなら、惜しくなくて……


「違うでしょ。
 雪那の人生は、雪那だけのもの」


「メイドはご主人様の幸せのために尽くすって。
 母から厳しく叩き込まれました!」


 強めに言い放っても
 千柳様の瞳の色は変わらない。

 漆黒の光が、瞳に宿ったまま。