「俺に尽くす人生から、雪那を解放してあげる」
…………えっ?
「雪那は今日から、
自分のやりたいことに時間を使えばいいよ」
いきなり……なんですか?
「俺の世話係は、もうしなくていいからね」
それって……
私は『用済み』ってことですか?
ゆっくりとほどかれた千柳様の腕。
体中を包んでいた幸福感が、
一瞬で冷凍され。
心の奥の奥まで、
凍りついていくのがわかる。
反抗しなきゃ。
千柳様の気が、変わってくれるように。
「私、やりたいことなんてありません」
「そんな寂しいこと言わないの。
雪那の人生でしょ?」
「私の人生は、全て千柳様のもので……」
私の時間も、命も。
千柳様のためなら、惜しくなくて……
「違うでしょ。
雪那の人生は、雪那だけのもの」
「メイドはご主人様の幸せのために尽くすって。
母から厳しく叩き込まれました!」
強めに言い放っても
千柳様の瞳の色は変わらない。
漆黒の光が、瞳に宿ったまま。



