「万里先輩とは、もう会っていませんよ」
「じゃあ雪那は、誰のお家に住むの?」
「聖子さんです!」
目をパチパチしながら、固まった千柳様。
「それ……誰?」と、首を傾けている。
「本屋のお隣で
そろばん教室をされている方です。
私がどうしても叶えたい夢を、
一緒に叶えようって言ってくださいました」
聖子さんは一人暮らしで。
旦那様は、もう他界されていて。
60代くらいの方で……
どんな説明をすれば、
千柳様に『万里先輩は全く関係ありません』って
わかってもらえるんだろう。
「えっと……聖子さんは……」
焦れば焦るほど、言葉が続かなくて。
「えっと……」を繰り返し、オロオロしてしまう。
そんな私に、
千柳様が驚き声をもらした。
「雪那に……夢ができたの?」
「……はい」
「『俺のために尽くす』って言っていた雪那が……?」
「だから……
千柳様のメイドには……戻れません……」



