「雪那に……お願いあるの……」
「なんですか?」
「このお屋敷から、出て行かないで。
俺も……戻ってくるから……」
「お願い」と懇願され。
抱きしめられたまま、
頭を優しく撫でられた私。
幸せにつかりきった脳が、
『千柳様のメイドに戻りたい』と
思ってしまった。
でもダメ……
私にはもう、自分の夢がある。
メイドと両立なんて、甘いことをしていたら
絶対に叶えられない。
欲望と夢。
天秤にかけるように、心が揺らぎ続けていると
千柳様の悲しげな声が、
私の耳の鼓膜を震えさせた。
「雪那は、雨宮君のお家に行くの?」
驚きが強すぎて
千柳様の腕から逃げ出してしまった私。
その行動が
拒絶したと勘違いさせてしまったようで……
千柳様は悲し気に、肩と視線を落とした。



