「雪那、この部屋は覚えている?」
「幼稚園の頃。
私がお母さんに怒られるたびに、
千柳様にかくまっていただいた
お部屋ですよね?」
「あの頃は、物置きだったけど。
今は俺の、宝物部屋なの」
「俺のこと、嫌いにならないでね」と
千柳様は苦笑いを浮かべ、
部屋のドアを開けた。
部屋の中は、まるで小さな資料室。
天井までの本棚が
3本の通路を挟むように並んでいて。
奥の壁には、クローゼット。
手前の広いスペースに、
2人掛けのソファーが置いてある。
収納のプロも称賛するほど、
白で統一されたファイルが並んでいて。
千柳様を嫌いになる要素なんて、
1ミリも見当たらない。



