「千柳様がお屋敷を出たのって……
私のことが……
嫌いだからですか……?」
「その……逆……」
えっ?
「子供の頃から雪那のことが、
大好きでたまらないからだよ」
笑みが一切ない
真剣な瞳で見つめられ、
動けなくなってしまった私。
「ご冗談……ですよね?」
「俺の気持ちが本気かどうか、
雪那の目で確かめて」
千柳様に手首を掴まれ。
強引に連れてこられたのは、
千柳様のお部屋の前。
千柳様専属のメイドなのに
私が立ち入り禁止の場所。
ドアが開けられ
腕を引っ張られても、
足が入るのを拒んでしまう。
「私が入っても、いいのですか?」
「今日は特別。
雪那に見せたいものがあるから」
千柳様は私の腕をつかんだまま、
部屋に入り。
奥にあるドアの前で、足を止めた。



