「綺月君がゾルックに戻って来てくれて、
良かったですね」
「ほんと。
綺月と心美ちゃんをくっつけるのに、
どれだけのお金と苦労がかかったか。
綺月にわからせてあげたいよ」
「まったく~」と言いながらも、
千柳様の声は優しくて。
弟を気遣う、お兄さんみたい。
「あとは天音が
ゾルックに入ってくれればいいんだけど。
そんなに嫌?って程、完全拒否だからね」
「アイドルレッスンを受けてくれているだけ
大進歩じゃないですか?」
「前に進んでいれば良いんだけど。
天音の心の闇は深いからね」
千柳様の声は、甘さ控えめ。
話している内容だって
たわいもないこと。
それなのに。
千柳様の温もりに包まれたこの状態で。
千柳様の声が
私の脳に溶けこむたび
幸せを感じずにはいられない。



