「もし……もし……」


『雪那、今どこ?』


「お屋敷の……自分の部屋ですが……」


『そのまま、そこにいて!』


 え?


『10分以内に行くから!』




 慌てるように
 ブツリと通話が切られた。


 突然の嵐が、過ぎ去って。

 本当に千柳様の声だったのか、
 脳が疑ってしまうほど。



 でも、間違いなく千柳様の声。


 いつもの優しさの塊のような
 おっとり声ではなくて。

 私に怒っているような、
 きつい命令口調だった。



 私、何かしちゃったのかな?

 ライブ前の大事な時間を使ってまで、
 私にぶつけたい怒りでもあるのかな?