「5歳の雪那に、俺が言ったんだ。
『毎年十五夜の日は、雪那が作るアップルパイを
二人で食べようね』って」
「去年も千柳さんとせっちゃんで、
お月見したの?」
天音の問いに、
思い出し笑いがこぼれる。
「リビングでアップルパイを食べたよ」
「なんで、家の中?」
「まさかの大雨。
雪那がね、紙に大きな月を描いて、
壁に貼ってくれたんだ」
「せっちゃんって、
たまに『大丈夫?』って思うことするよね」
「しっかり者の雪那も、ちょっと天然入る雪那も。
どっちも可愛いでしょ?」
「千柳さん、自覚ある?」
「ん?」
「せっちゃんの天然は、千柳さんのせいだからね」
「なんで、俺?」
「赤ちゃんの時から、せっちゃんのこと洗脳して」
「洗脳って……」
俺、そんな犯罪チックなことを
した覚えはないよ。



