誰もいない楽屋。
天音は、ソファに座り。
俺も、向かい合うように
ソファに腰を下ろした。
まだ静まらない胸のザワザワを
なだめるように、
雪那クッションを胸に押し当ててみる。
やっぱりダメだ。
雪那クッションだけじゃ、
俺の心は完全には戻らない。
急に
涙を流す雪那の姿が、脳に映し出され。
引きちぎられるような心の痛みを
こらえていると。
「千柳さん……ごめんね……」
天音が、申し訳なさそうな声を発した。
「僕のせいでしょ?」
「え?」
「僕が理事長室にせっちゃんを呼んだから、
二人の関係が悪くなっちゃったんでしょ?」
「天音のせいじゃないよ」
完全に俺のせい……
すまなそうに肩をすぼめる天音の顔は、
どんどん暗くなっていく。



