「赤ちゃんの頃から可愛すぎる……
雪那が悪いよ……」
ため息混じりの言い訳に、
天音が俺の耳を引っ張ってきた。
「痛っ」
「千柳さん、せっちゃんのせいにしないの!」
だって、そうでも思わないと……
情けない自分を闇に葬りたくなるから。
「あ、でも……
ある意味、せっちゃんのせいか」
「え?」
「せっちゃんの体も、
千柳さんの毒で漬かりきっているから。
お互い様だね」
天音。
それって……どういう意味……?
声にならないハテナを瞳に宿して、
天音を見上げてみる。
でも、ハテナの答えは返ってこなくて。
「千柳さん。
これで、歩けるくらいにはなった?」
俺が頼りなく頷くと、
天音は俺の腕を引っ張って、立たせてくれた。
「千柳さん、僕と一緒に楽屋に来て」
「いいけど……」
「氷牙さんも綺月君も、
楽屋立ち入り禁止だからね。わかった?」
離れたところで俺たちを見ていた
氷牙と綺月は、
天音の迫力に負けたように頷いて。
俺はセーラー服クッションを
思いっきり抱きしめながら、
楽屋まで重い足を引きずった。



