再び強く襲ってきた
心の痛みをごまかしたくて
クッションに思いっきり顔をうずめる。
その時
俺の嗅覚が、敏感に反応した。
「雪那の……匂いがする……」
「千柳さんって、オーラだけじゃなくて
微かな匂いまで、嗅ぎ分けられるの?」
「警察犬になりなよ。人探しに役立つよ」
と、俺をいじる天音に。
「俺がわかるのは……
雪那の匂い限定だから……」
俺は、ぼやき声を返し
クッションに頬をこすりつけた。
雪那の香りが、脳に届き。
心の荒波が
少しだけ穏やかになったのがわかる。
「中学の時の制服だから、
匂いは取れてるかなって思って。
一晩だけでいいから
セーラー服を着て寝てって、
せっちゃんにお願いしたんだよ」
天音。
そういうことは、先に教えてよ。
「セーラー服姿の雪那……
見たかったのに……」
「千柳さん、怖っ。
それ、ストーカー発言だし」
「普通でしょ」
「アハハ、無自覚って。
千柳さんって、綺月君より沼が深いね」
「え?」
「好きな子に
『毒はまり』しすぎってこと」



