「せっちゃんはここに呼べないでしょ?
今は、このクッションで我慢して」
天音に無理やり押し付けられたもの。
それは。
本物の冬服のセーラー服の
裾や袖が縫ってあって。
綿を詰め込んで、
パンパンに膨らんだものだった。
「せっちゃんが中学の時に着ていた
セーラー服だよ。
ちょっとは、
精神安定剤代わりになるでしょ?」
雪那が着ていた……セーラー服?
「千柳さんがパニックを起こした時用に
作っておいて、正解だったよ」
「大事にしてよ」と微笑んだ天音から、
俺はクッションを受け取った。
不思議。
このクッションを抱きしめるだけで
心のザラザラが薄らいでいく。
天音は長い前髪を耳にかけ、
真ん丸な瞳をさらして微笑んだ。



