綺月と氷牙が、ステージ袖にはけていく。
俺も早く追いかけなきゃ!!
リハを止めて、メンバーにもスタッフさんにも
迷惑をかけているんだから。
しっかりしなきゃ!!
自分を奮い立たせるように息を吸い込んでも、
肺に届く気がしない。
心臓が、暴れまくるように跳ねだして。
呼吸がどんどん乱れていって。
体の震えが止まらないまま、
ステージから一歩も動けなくなった俺。
崩れこむように、
ステージにしゃがみ込んだとき。
「千柳さん。はい、抱き枕!」
真上から、柔らかい声が降ってきた。
見上げると。
さっきまでステージ下で
リハーサルを見学していた天音が、
何かを俺に差し出している。