「千柳、大丈夫かよ?」

 隣にいた綺月が、俺の顔を覗き込み。



「マネージャー、すいません。
 休憩ください」

 氷牙の焦り声で、俺たちもスタッフも
 お昼休憩に入ることになった。





 は~。

 何やってんだろうな……俺……




 あと4時間後には
 ゾルックのライブが始まるのに。


 ステージの上で。
 顔を隠して、うつむいて。

 震えていることしかできないなんて。





「千柳も、休憩行くぞ」

 綺月に肩を叩かれ。


「楽屋で、苦いコーヒー淹れてやるから」

 氷牙が、眼鏡の奥の瞳を優しく揺らした。




 俺が歌えなくなった理由も聞かず。

 いつも通り接してくる
 綺月と氷牙の優しさに、
 余計に心が折れそうになる。




 やばっ。俺。

 心が崩壊しそう……