ハテナを頭に浮かべたまま
顔を上げた私。
瞳ががなくなるほどのユルユル笑顔が
目の前にあって。
独り占めしたいほど大好きな、
千柳様の笑顔で。
催眠術にでもかけられたように
私の口が開き……
「千柳様が望む物は、なんでも差し上げます」
気づいたら
何かに操られたように
言葉を紡いでいた。
「へ~。なんでもねぇ~」
千柳様の瞳には、悪そうな光がキラン。
わ……私……
とんでもないことを言っちゃった!
「で……でも……
千柳様に……あげられないものも……
やっぱりあって……」
両手をフルフル振りながら、
私はプチパニック。
「俺にあげられない物って、雪那の命とか?」
命?
「私の宝物は、
そんな無価値なものではありません」
「雪那の命が無価値って……
本当に思っているの?」
もちろんです!
「千柳様が死神に連れ去られそうになったら、
私の命を差し出しますから!!」
「もう、雪那ったら。
自分の命は大事にしなくちゃでしょ」
千柳様は微笑んで、
私の頭を撫でてくれたけれど。
「ご主人様を幸せにするのが、
メイドの役目なんです!」
きっぱりと言い放った私は
可愛げがなさ過ぎだなぁと、
一緒にため息もこぼれる。



