「スフィア!」

男の子がそう言った刹那、杖が淡い白に光る。まるでファンタジー映画を見ているみたいだ。

「えっ……」

目の前で起こっていることが信じられない。光っている杖から白いモヤのようなものが流れ、それが丸い形になっていく。数十秒かけ、それはサッカーボールより少し小さいくらいのボールになった。

「ただのボールじゃつまんねぇだろ?」

プロクス、と誰かが木の棒を振る。するとボールが一瞬にして燃え盛る炎に包まれた。驚きで言葉が出てこない。これって現実なのか?

「フライ!」

そう白髪に黄色の目をした男の子が言うと、誰も触れていないのにボールが浮く。そして一人の男の子に向かって飛んでいった。

「フライ!」

その男の子も木の棒を振る。すると、ボールは次の人のところは飛んでいく。

あまりにも非現実的な光景に、僕は後ずさる。生きていた頃、魔法使いが登場するファンタジーはたくさん執筆してきたけど、目の前であんな景色を見せられたらどうしたらいいかわからない。