「実は、部屋でくつろいでいたら急にこの世界に来たんだ。街には誰もいないし、怪物には襲われるし、久しぶりにこんなドキドキしたよ」

リオンはそう言い、いつものように笑う。その体ふと、僕はこの小説の最後の文章を思い出す。それはーーー。

「心から、愛してる」

そう僕が呟いた刹那、僕とリオンは白い光に包まれた。



僕が目を開けると、そこにあったのはいつもの僕の部屋だった。そして僕の隣にリオンがいる。

僕の手元には、本の世界に入る前に手にした本があった。パラパラとページをめくってみるけど、本の世界に入ってしまうなんてことはない。

「ノワール……」

目を覚ましたリオンに声をかけられ、僕は「気が付いたんだね」と微笑む。リオンはどこか真剣な目をしていた。

「思い出したんだ、父さんたちがこの事件を調べていたこと」

「事件?」

「最近、原因は不明なんだけど自分の意思とは無関係に本の中に閉じ込められる事件がたくさん起こっているんだ。何十年か前にも同じ事件があったんだけど、その時より今回はひどいらしい」