路地裏の唄


















同時刻、某所。






「マー、こりゃまぁたえらい団体さんやなぁ…」




分子大量発生の情報を受けて駆け付けた深梁は素っ頓狂な声を上げて呆れる。
影の差し込む、建物に囲まれた袋小路には無数の分子。

影にまぎれ視認できない所にもこちらを見る獣の気配がする。



ストールズが現れる前はあり得なかったと聞くが、深梁がこうして前線に出られるようになった時には既に当然のようにこう言ったケースが頻発するようになっていた。

わかっているのは、ツールの中で何かしらの力によって分子を統括することのできる個体がいる可能性が高いと言う事だけ。


「ざっと勘定すんのも面倒やわぁ」

『んーでもしてくんないと俺も氷速(ヒバヤ)つなげてる意味なくなっちゃうんだよなぁ』


その華奢な肩に担がれた通話状態の武器型のケータイから聞こえる声が穏やかに苦笑する気配がして、深梁は先の発言を軽口であったと認める。


「道(ミチ)兄さん困らすん嫌やからしょーがないすんねんでぇ?えーとー少なくても100以上、250ってとこやろか」


それまたえらい団体様だなぁ、と返ってきた返事に「せやろぉ?」と笑う。