メーカーによって改造されたケータイには『帰巣機能』がつけられる。
メーカーがランダムに定めているポイントに到達するとメーカーのいるところまでのルートを意識としてのメモリに残すことなく帰って来るプログラムが自動で起動するようになっている。

しかしそれは受動的な機能であるためツールとして改造されたケータイ達の中にはメーカーの元へ戻るまでの道のりやデータは残らない。


道のりの途中で意識は途切れ、気がつくと戻って来ている。


メーカーが何年も正体を知られていない理由のひとつでもある。
















『ヤ、おかエリ。ラビッとにロップイや』


どこか間延びしたような、電子ノイズの混ざった歪な声。
現代世に出ているケータイに搭載される人工声帯よりも遥かに劣った、規格外に分類される声。

その声をスイッチにして、苣とコンツの意識は各々の支配下に戻ってくる。








無人の真っ白なフロア。




どこから此処に入ったのかすらわからない。

此処がツールの『巣』だった。