「深梁の貧血?知ってたけど?」




一段落した後、県が思い出したように始めた深梁の貧血持ちの件を聞いた現樂は特に驚く事もなく答えた。



「えーっ!?樂さんなんで教えてくれなかったのっ」

「だって聞かれなかったし」


現樂が文句を言われても笑顔で対応するのはおそらく県だけだろう。
それにしても、と原十郎が一人掛けのソファを占領しながら呑気な声をあげる。


「このまま他のツール達もなんとかリペアしていけばストールズの戦力はなくせるんじゃないか?」

「んな簡単に行ったらワクチンソフト機関はあんなに成長はしなかったろうよ」


声のままのような呑気な意見に返す彼の顔には県とじゃれていた時の面影は微塵もない。


「苣はどっかの誰かさんが入れたウィルスで苣が無力化されてたしコンツのは特殊なケースだ。
他のツールが同じように行けると考えるのは楽観が過ぎる」

「コンちゃんも戻らなくなったらまた追っ手が来るだろうね…」

「とりあえず苣もコンツも走りは速い。
追っ手遭遇時のメンバーに不安があったら即俺に連絡入れろ」


現樂の言葉に壁に持たれていた苣が訝しげな視線を向けた。


「今回にこりただろう。
俺とコンツがここに留まっていては追っ手の被害がここにかかる事は立証されている。
俺とコンツは離れた場所にいる方が安全だ」

「私もそう思います。我が君の迷惑になり得る事はしたくないですもの」


苣の言葉に律の隣に座っていたコンツがあっさり同意する。
しかしそれにはその場にいたラプソディアのメンバー全員が一様に、

「却下」

と切り捨てた。



「せっかく仲間になったんだから一緒に遊びに行ったりしたいよ!」

「もう深梁さんの甘味処に付き合うのはでか兎の役割なんだし…」

「せやで!すぐ連れて行かれへんと困るやろ!」

「全然迷惑なんかじゃないよ!せっかく知り合えたんだからもっと話したりしたいし」

「リペアした以上調子がわかるとこにいた方が都合が良い」

「私もそう思います」

「そういうこったのぉ」


各自個人的な理由を述べるメンバーに白髪赤眼の二人は目を白黒させていたが、やがて了承した。