「そうなんだ〜」などと言いながら県と玖科がひらひらと手を振ると、深梁は「はっ離せ貴様ッ…」と今だ抵抗を見せる苣を連れてにこやかに去って行った。
「あの、お店って…?」
嵐が去ったように静かになった研究室を出ながら県に尋ねると苦笑するように笑った。
「甘味処の事だよ!
深梁ちゃん、フィールドワーク派だからあちこちで見つけるみたいで、誰かしら連れて行きたがるんだよ〜」
「そうなんだ…」
ついていけばよかったなぁ、などと自分の慢性的に空いている腹具合を感じ思う。
そんなことを見透かしてか原十郎が律の目の前にチョコレートを差し出し、律は喜々としてそれを受け取った。
「おっ邪魔〜」
「おじゃましまっす〜」
呑気な声に玄関の方を見ると、奇妙な出で立ちの二人組が目に入った。
一人は原十郎の次くらいの長身で襟足にもかからない短髪の若い男。
切れ長の眼は同じような眼の現樂とは違い冷ややかさよりも飄々とした印象を与え、何処を歩いても浮きそうな僧侶の格好をしている。
空気をよく含みそうな衣だが襟元から覗く首筋などを見るとかなりの痩身を連想させる。
右耳には手の平程の臙脂の玉が付いた重そうなピアスがぶら下がっていた。
「あの、お店って…?」
嵐が去ったように静かになった研究室を出ながら県に尋ねると苦笑するように笑った。
「甘味処の事だよ!
深梁ちゃん、フィールドワーク派だからあちこちで見つけるみたいで、誰かしら連れて行きたがるんだよ〜」
「そうなんだ…」
ついていけばよかったなぁ、などと自分の慢性的に空いている腹具合を感じ思う。
そんなことを見透かしてか原十郎が律の目の前にチョコレートを差し出し、律は喜々としてそれを受け取った。
「おっ邪魔〜」
「おじゃましまっす〜」
呑気な声に玄関の方を見ると、奇妙な出で立ちの二人組が目に入った。
一人は原十郎の次くらいの長身で襟足にもかからない短髪の若い男。
切れ長の眼は同じような眼の現樂とは違い冷ややかさよりも飄々とした印象を与え、何処を歩いても浮きそうな僧侶の格好をしている。
空気をよく含みそうな衣だが襟元から覗く首筋などを見るとかなりの痩身を連想させる。
右耳には手の平程の臙脂の玉が付いた重そうなピアスがぶら下がっていた。



