路地裏の唄

やがて彼が手にあるバインダーをパンッと手に持っていたペンで叩き立ち上がると、緋奈咫も他の者達も皆警戒を解いた。





「わかった。
ラプソディアに害を及ぼさないならお前は客人だ。
ヒナがお前をリペアした以上他にも点検しときたいところがある。
日を分けてやるからそれまで律の…待てよ…あーくそ…」



急に表情を曇らせた現樂は口元に手をやるとケータイと同じくらい歪みのないその眉間に深々と皺をよせて数秒黙った後、非常に言いたくなさそうに口を開いた。






「…あー………県ん家のが良いな。
道府(ミチフ)がいる」





人間関係に鈍くここに来て日の浅い律にもわかる程、現樂の県への態度は他と違う。

そのうえ律でも原十郎であっても県に関する事になると『虫』か『馬の骨』にするくらい県に男の影がちらつく事を良しとしない。


効率と私情のジレンマに舌打ちしたに違いなかった。



「ねね、シャチョー」

「なんだ」




機嫌の悪い現樂相手でもいっこうに態度変わらずむしろなんだか良い事でも思い付いたかのようにニコニコしている深梁は慣れているのか度胸があるのか。

そして彼女は律と同じようにそんな彼女を何の気なしに見ているラビットを示して提案した。




「名前、私らがあだ名みたいな感じで付けません?
型だけで呼ぶなんてなんか堅苦しゅうてどーもやーなんですわ」