路地裏の唄

「あーやっぱりここだったーっ」

「…只今戻りました」





研究室の扉が開き、明るい声が響く。



「おう、おかえり」
「おかえりなさい」



ずっとバインダーに目を落としていた現樂が顔を上げる。
その視線につられるようにして律が振り返ると、先程ぶりの県と玖科が入って来た所だった。

口々に律や原十郎からくる労いの声に応じつつ県達も中に入って来ると、そこで皆が囲んでいるケータイに気が付いた。



「んー?
この子…ラビット?」

「そう…だね。
随分ウィルスにやられてるみたいだけど」



県の零した言葉にその虚ろな朱い眼を覗き込んだ玖科が頷いた。




ケータイにはその機能スタイルや特徴によって"型"というものが与えられる。


原十郎はその文武の均整とれた能力ある"梟"。

獰猛な印象とは反した忠実な実行力を持つ緋奈咫の"狼"。

そしてゆらゆらとたゆたうようにしてそれでも確かな力を隠し持つ玖科の"海月(クラゲ)"のように。



それらは他の生き物に当て嵌められる事が多い。







そうして正式なマスターを持たないアンインストールズのツールである彼らは大概その型で呼ばれる。