路地裏の唄

「あ、この子のことですか?」


独特のイントネーションのはいった口調でその手に持たれた物を持ち上げる。

硬質に見える黒ずんだそれは持ち主である深梁の背丈より長く、1番上には動物の角や牙に似た人の顔ほどもある突起が突き出ており、その少し下にその一回り小さい同じ形のものがある。



鋭利なハンマーにも見えた。




「?これ何?」

「ケータイだ」

「えぇっ?」




現樂の事言葉に思わず素っ頓狂な声を上げる律に原十郎がカラカラと笑う。




「りぃは俺達みたいなタイプしか知らんからのぉ」

「人型しか見たことないよ…」


興味深そうに深梁のケータイを眺める律に作業をしながら緋奈咫が言う。



「深梁さんのケータイは現在のアンドロイド型が主流になる前に出回っていた型で心理機関の搭載がされていない武器型のケータイです」


「うちの家頭かったいから人型使わせてくれへんのですわ」

「無理矢理人型にした奴もいるけどな」



そう言って二人は示し合わせたように笑った。