路地裏の唄

すぐ近くで聞こえた声に律が振り向くと、濃い紫色の眼と髪を持つ少女と目が合った。


釣り気味の目で綺麗なラインを描く髪は後ろのうなじから前へ流れるように深緑の軍服の下からもかなり主張する豊満な胸の上に切り揃えられている。


軍服の下にはクリーム色のパーカーを着、膝上まであるブーツとソックスを履いていてもなお美しい太腿がしっかり見えるくらい短いショートパンツ。


かなり着崩してはいるが、軍服は有名なものだった。



「あぁ、新入りの妃ノ神 律と保護者のケータイ原十郎」


『保護者』と子供扱いする現樂に『う…』と律が苦い声をあげた。


「こいつは乃木 深梁(ノギ ミヤナ)っつって自称…」
「"ラプソディアのスパイ担当"言いますーっ
仲良うしてなー♪」


にこーっ!と、深梁は屈託なく笑う。


「あ、はい!よろしく……
でも…その恰好…」

「こいつの家は代々国家機関に尽くす家系でな。
こいつも所属はワクチンソフト機関だ」



「ちゃんとシャチョーについて行きたいんやけどねー」と苦笑する。
"シャチョー"とは現樂の事らしい。







「ずいぶん古い型じゃのぉ?」


律の隣に立つ原十郎が穏やかに驚きの声をあげた。