蒼い月が、寝静まった街を照らす夜。












「近いのぉ、群れになっとる」



現樂に新しく付け直された探知機能のせいで、精度が増して少々頭が痛むらしい原十郎の声に、律は給水タンクの上から静まり返る町並みを見渡した。





「群れって、どのくらいいるの?」

「ざっと30じゃないかー?」


うーん、と眉間を指で軽く揉みながら返してくる言葉に思わず目下に立つ相棒に目を向ける。




「30って、それ、僕一人でなんとかできるの?」

「さぁのー」

「もー原十郎!」








「30と言っても大小に違いがあるからなんとも言えないかな」


背面からの声に振り返ると、県とそのパートナーであり先程の声の主である玖科が到着したところだった。


「ラクさんいわく"力のコツさえ掴んでりゃなんとかなる"だってー」




現樂の粗雑な物言いを真似る少女の両手には湯気の如くパワーを立ちのぼらせるグローブがはめられている。


ここ何日か、県達について行き"通常のワクチンソフトの仕事"を学んできた。



幼い頃、両親がおらず保護者のようなケータイの元で育った律は、"喧嘩の仕方"と称して日々原十郎によって鍛えられていたため、体術は初めから備わっていて仕事の飲み込みは驚く程にスムーズだった。