「あ、起動しました」
















あどけなさの残る少女の声がして、目を開けると強い白色光が目に入った。

やけに頭がすっきりしている。

















「よぉ、原十郎」






声のした方に首を巡らせると、深緑色の作務衣を来た齢20程の男が椅子に腰掛け、バインダーに何か書き付けていた。




「…修理工(リペアマン)か?」

「専門はカスタマイザーだ」



上だけ縁のない眼鏡に切れ長の目が印象的な端正な顔立ちだが、口調は粗野で男にしては長い髪をみつあみで一つに括り、長い前髪は片方だけ耳にひっかけている。




「わりぃが治す段階でメモリを解析した。
キャパが限界だったからあんたにゃ無断であの小僧の産まれる辺りから以前のメモリはサーバーを削って軽くしといた」


その言葉に、荒くロックのかかったメモリを解除してみる。














「………そうみたいだな」



エラーは、起こらなかった。




「腕が良いな。小僧」


処理できたことでようやく受け入れる事が出来たメモリの残滓が、涙のように瞳から溢れてくる。



「そりゃどーも」









男は興味なさそうに返事をした。