兄とあたし

 かず兄は、あたしを見て、すぐに「俺の妹だ!」と気付いたらしいが、あたしは、かず兄の事を、覚えてなかったから、分からなかった。
 かず兄は、「えりって、呼んでいい?」と聞いてきた。
 あたしは、「うん。いいよ。」と答えた。
 「えり…。
これから、重い話しをするね?」
「うん…。」
「えりは、俺の妹だよ。」
「えっ?!
はっ?!
えっ?!」
「驚くよね。
こんな話し、いきなりされたら…。」
 あたしは、うなずくことしか出来なきなかった。
 かず兄は、続けた。
 「えりが、生まれた時、俺、すっごく嬉しくて、何度も抱っこしたり、ミルクあげたりしたんだ。」
「そうなの?!」
「そうだよ。
えり…、今、幸せか?
お袋は、どんな感じだ?」
 あたしは、急に、顔色が変わった。
 「えり…?」
 あたしは、迷った。
 本当の事を話すかどうか…。
 「えり、少しずつ話していくね?」
「うん…。」
「俺達の親父とお袋は、えりが、赤ん坊の時に、離婚したんだ。
親父が俺を引き取り、お袋がえりを引き取った。
でも、お袋は、すぐに出て行かなかった。
それは、俺が、えりを離さなかったから。
親父もお袋も、「二度と、えりには会えない。」そう言って、俺とえりを引き離そうとした。
俺は、毎日、えりを抱きしめ、寝る時は、腕枕をして、眠っていた。
それだけ、えりのことが、大好きだったんだ。
だけど、ある日の深夜、俺が眠ってから、お袋は、えりを連れて出て行った。
俺は、毎日泣いた。
えりが、いなくなったから。
受け入れるまで、何年もかかった。」
「そうだったんだ…。
あたし、お兄ちゃんには、愛されてたんだね…。」
 あたしは、涙を流した。
 「「おにいちゃんだけ。」ってどういうことだ?」
「お母さんも、お父さんも、弟を大事にしていたから…。
あたしなんて、要らないんだと思ってた。
お父さんは、あたしに、すぐ、暴力を振るうし、お母さんは、殴られてても無視だったし…。」
「えりを殴った?!」
「うん…。
殴られて、それが嫌で、出て行こうとしたら、お母さんに、「全裸で出ていけ。」って言われたし…。」
「何だ、それ!!
虐待じゃないか!!
だから、「俺だけ。」て言ったのか…。」
「うん…。
ずっと、愛されてなかったから…。」
「そんな…。」
 かず兄は、「信じられない。」と言った顔をした。
 「えり。
これからは、俺が、えりに、愛情をやる!
親から貰えなかった分、俺がやる!!」
「えっ…?」
「俺じゃ嫌か?」
 あたしは、首を横に振った。
 「じゃあ、決まりな。」
「うん。
分かった。
かず兄。」
「かず兄か…。
いいな…。
その呼び方。」
 あたし達は、にっこり、微笑み合った。