「今日は何かの撮影だったのかしら?」

 「……はい。もう終わりましたけど」

 「そう。……どんな撮影だったのか、気になるけど、聞かないでおくわ」

 「そうしてください。……では、お先に失礼します」

 わたしはそう言って立ち去ろうとして、また歩きだそうとした。……その時。

 「ねぇ、ちょっと待って?」

 とまた声をかけられた。そしてわたしは、立ち止まった。

 「……なんでしょうか」

 「リュウと撮影したあのドラマね、すごく視聴率がいいの。ネットでもね、わたしたちが本当にお似合いのカップルだって、書き込みもあったのよ?」

 荒蒔繭那は自慢するかのように、そう言い放ってニヤリと笑っていた。

「……そう、ですか。良かったですね」

 だけどわたしは、荒蒔繭那になんて負けない。負けてたまるものか。荒蒔繭那が未だにリュウを狙ってるというのは、噂では聞いている。だからこそ、リュウは絶対に渡さない。……絶対に。