リュウが、撮影を終えたわたしに花束を渡してくれた。

 「ひとりで、よく頑張ったな?」

 リュウが優しく頭を撫でてくれた。

 「リュウが、ずっと見ててくれたからだよ」

 「俺は何も。 さて、撮影も終わったし、後はスタッフさんがやってくれる。着替えて帰ろう」

 「……うん」

 初めての撮影で、とても緊張したし、不安もあったけど。無事に撮影が終わったことで、ホッとした。

 そしてそのまま控室に戻ろうとしたその時だった。「あら、あなたここで何してるの?」と声をかけられた。でもその声には、なんとなく聞き覚えがあった。

 そして声の主のほうに振り返ると、その声の主はやっぱり荒蒔繭那(あらまきまゆな)だった。……やっぱり荒蒔繭那だった。

 「あなたは、荒蒔繭那……さん」

 「久しぶりね? まさかこんな所で会うなんて、思わなかったけど」

 「……どうも」

 わたしだってまさか、こんな所で会うなんて思ってなかった。……再会したくない、人だったのに。