「ほら、いつものなでしこになった」

 「えっ、えっ……。え?」

 「それこそ、いつも通りのお前だよ。……お前ならやれる。大丈夫だ」

 悔しいけどわたし……。リュウのこと相当好きみたい。そうやってリュウが笑うだけで、わたしも自然と笑顔になってしまう。

 これが恋の力というものなのか? これが恋の魔法というヤツなのだろうか?

 リュウのその魅力に、わたしはとことんハマリ込んでいる。逃げられない。

 「……なでしこ?」

 「リュウ、ありがとう。……すごく、元気出た」

 「良かった。 あ、撮影また始まるぞ?」

 「うん。……行ってくる」

 始まる直前、メイクさんがメイクと髪型を少し直してくれた。そしてまた、すぐに撮影が始まった。

 「なでしこちゃん! いいね!その表情!もっと笑って! そうそう!」

 カメラマンさんにうまく煽(おだ)てられ、次第にわたしは緊張がほぐれていくのが分かった。やっぱり、リュウのおかげだなと思った。