「どうして?」

 なのにリュウは、どうしてダメなのかという顔をで聞いてきた。

 「どうしてって……」

 考えれば分かることだと思うけど……!

 「あの熱愛スキャンダルが本当だと分かれば、変な女が寄ってこなくて済むんだ。 頼むから協力してくれ」

 「だからムリです! なんでわたしがそんなことしないといけないの?」

 「オレはモデルだ。雑誌の表紙だって飾ってる。 こんなにいい男が彼女のフリをしてほしいと言ってるのに、どうしてダメなんだよ?」

 「だから、勝手にわたしを巻き込まないで!わたしとあなたは無関係でしょ?実際付き合ってないんだし。 もういいですか?失礼します」

 わたしはそう言って帰ろうとした。するとリュウは、わたしの手を掴んでそれを阻止した。

 「ちょっと待って。なでしこ」と名前を呼んでくる。

 「……な、何?何ですか?」

 「まあまあ、とりあえず座ろうか。山桜なでしこさん?」

 「…………」

 急になでしこって呼んだりフルネームで呼んだり、なんなの?