「初めてのドラマ撮影だもんな? 緊張しただろ?」

 「……うん。だけど、リュウがそばにいてくれたから、緊張も和らいだよ」

 「そうか?」

 実はわたしの役には、荒蒔繭那の元カレ役だった俳優の人に告白されるシーンがあった。だけど緊張からか、セリフを噛んだり抜けてしまってりと、何度もNGを出してしまって失敗してしまった。

 なのにその俳優さんも、リュウも、焦らずにやってくれて、慰めてくれたんだ。大丈夫だよ、ゆっくりでいいって。 だからわたしは、頑張ることが出来たんだ。

 初めてのドラマ撮影で感じたのは、わたしはリュウみたいにはなれないってことだった。リュウの完璧な演技に、すらっと言えるセリフ力、噛んだりしない滑舌。なのにわたしは、セリフも少ないのにそれすらもうまく言えなくて……。

 本当に申し訳無いし、本当に情けない。ドラマになんて出たことないからこそ、現実も思い知らされた。……わたしは、モデルとしても、女優としても向いていない。