「早速なんですけど、ここのシーンの打ち合わせ……」
「悪い。俺パス」
荒蒔繭那の言葉を遮ったリュウは、わたしの手を引くと、そのまま歩き出した。
「え?リュウ……?!」
何?どうしたの?
「アイツと話すと面倒だから、話したくねぇ」
リュウは少し離れた場所に行くと、そこにあるイスに座り、セリフの確認を始めた。わたしはそんなリュウに何もしてあげれることもなくて、帰ろうかとも思っていた。
もちろん荒蒔繭那に危害を加えられることはないとは言い切れないけど、荒蒔繭那はきっと……。リュウを手に入れるためなら手段を選ばない気もした。 だって荒蒔繭那は、わたしよりも自分のほうがリュウに相応しい人間だと思っている。
こんな芸能界初心者のわたしなんか、他の人に比べたらペーペーだし、むしろ今ここにいることすら申し訳無いくらいだけど……。ただ、本当のリュウのことを知っているのは、誰よりもわたしだと思ってる。だから、リュウのことは誰にも渡さない。